この物語はフィクションであり、・・・・・

第09話 器が違います。

 あ、社長! おはようございます。 いつも大変お世話になっております。


 なんだ、君か? 息子が出ると思って電話したのになあ。


 申し訳ございません。 今、研修を兼ねて、部下が外回りにお連れしておりまして・・


 あ、そう。 まあ、君のところで面倒見てもらってるんだから。 良いようにしてよ。


 はい。 ありがとうございます。
 しかし、コトワザというのは良くできてるなあ、と最近改めて感心してるんですよ。


 どんなこと?


 あの、『栴檀は双葉より芳し』と申しますが、正にご子息のために作られてるなあと思いまして。


 君も上手いこと言うねえ。 でも、お世辞言っても何も出ないよ。


 とんでもありません。 
昔からお世話になっている社長に、今更お世辞申し上げても仕方ないじゃありませんか。


 そりゃ、そうだな。


 いやぁ、ウチの部下も申してるんですよ。
当たり前かもしれませんが、『他の新入社員とは、全然違うなあ』って。


 そんなことないだろ。 大学じゃあ、遊んでばかりでロクに勉強してなかったようだし。


 社長。 社長にこんなこと申し上げるのは大変恐縮ですが、勉強すれば良いってものではございませんので。 実社会は、教科書通りには参りませんから。


 うん。


 ご子息は、器が違いますよ。 近い将来、立派に御社のトップになる度量を持ってらっしゃいます。 『大学で遊んでた』と仰るのも、照れ隠しではございませんか?
 言葉の端々からも、才能が溢れてらっしゃいますから。


 そう言ってもらうと、俺も本当はうれしいけどね。


 社長。 先ほども申し上げましたように、今更お世辞は申し上げません。
 実は、ご子息に『ウチの将来を担って頂けたらなあ』と、この前も役員と話しておりまして。 数年と仰らず、このまま当社でというわけには参りませんでしょうか?


 まあ、お願いするとき話した通り、君のところで勉強させてもらった後の計画はもう出来てるんでね。 俺が会社を潰さない限りね。


 うーん、御社がどうかなることは考えられませんので、残念というのも失礼ですが、本音は非常に落胆しております。


 そこまで評価してくれてうれしいよ。 ありがとう。


 とんでもございません。 こちらこそ、数年とはいえご子息を預からせて頂きありがとうございます。


 それじゃあ、よろしく頼むよ。


 はい、お電話頂いたことはお話しておきますので、後ほどご連絡があるかと存じます。
 近々、お近くまで出張する予定がございますので、またご挨拶に伺わせて頂きます。


 電話のことは黙っててくれよ。 
 それから、こっち方面に出張でもあったら、是非ウチに寄ってくれ。 色々話も聞きたいし。


 ありがとうございます。 それでは、その際はよろしくお願いいたします。


 楽しみにしてるよ。 じゃあ。


 わざわざご連絡いただき、ありがとうございました。 失礼いたします。






  はい、・・・・・ あー君か、ご苦労さん。 どうだい、お坊ちゃんは?


 ・・・・・ えっ! 帰った? まだ、昼過ぎだぞ!


 ・・・・・ 『歩き回って疲れたから帰る』って?


 ・・・・・ まあ、いいや。 前にも言ったようにお客さんだから。

      気にするな。


 ・・・・・ えっ、お前が帰ったら? 即刻クビにきまってんだろう!




 ・・・・・ それより、お坊ちゃんが偉くなったとき仕事貰えるように十分接待しとけよ。

      経費使って良いから。


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